その他様々な発明や発見
このページ中は準備中の感心・感銘ものがたりです。ランバート=ベールの法則(18〜19世紀/ランバート、ベール)
それ以前:溶液の濃さは“見た目”頼りで、比較や定量が曖昧。
発見後:吸光度=濃度×光路長という直線関係で、分光光度計による濃度測定が標準化。化学・生化学の定量が一気に正確に。
メンデレーエフの周期表(1869/ドミトリ・メンデレーエフ)
それ以前:元素はバラバラの個性の集まりで、比較や予測の物差しがなかった。
発見後:性質の周期性を見抜き、未知元素(ガリウム等)を予言。化学に“地図”を与えた。
電球の実用化(1879/トマス・エジソン、ジョゼフ・スワン)
それ以前:夜はろうそく・油ランプ。暗い・煤ける・火事の危険・燃料補給が面倒で、夜間作業や学習に制約。
実用化後:長寿命フィラメント、真空・口金・配電網をまとめて設計。スイッチ一つで明るく安全、夜の時間が“使える”時間に変わった。
寒天培地とシャーレ(1881/ロベルト・コッホ&ファニー・ヘッセ、1887/ジュリウス・リヒャルト・ペトリ)
それ以前:液体培地だと菌が混ざり、純粋培養が困難。原因菌の特定や再現が難しかった。
導入後:寒天でコロニーを分離、ペトリ皿で扱いやすく。感染症研究と食品微生物検査が一気に精密に。
ホッチキス(1890s〜1903/E.H.ホッチキス社ほか)
それ以前:書類の綴じは糸・紐・ピンで手間・強度不足。大量配布や製本が大変。
普及後:コの字針で一瞬固定。教育・出版・オフィスの事務作業が桁違いに速くなった(日本では社名が一般名に)。
飛行機(1903/ライト兄弟)
それ以前:長距離移動は船と鉄道。大洋や山脈を越えるには日数〜数週間。
実現後:揚力・推力・操縦の三位一体設計で持続飛行。世界の距離感と物流が縮み、人と物の流れが一変。
インスリンの発見(1921/22/フレデリック・バンティング、チャールズ・ベスト、J.J.R.マクラウド、J.B.コリップ)
それ以前:1型糖尿病は食餌制限しても多くが短命。
発見後:膵臓抽出から血糖降下を実証、精製・製剤化。糖尿病が“管理可能な病”になった。
アインシュタインの方程式(一般相対論, 1915/アルベルト・アインシュタイン)
それ以前:重力は“遠隔力”。水星の運動など説明しきれない現象が残った。
理論後:重力=時空の曲がりとして統一的に記述。GPS補正からブラックホール・重力波まで道筋を与えた。
ハッブルの宇宙膨張(1929/エドウィン・ハッブル)
それ以前:宇宙は静止と考えるのが自然。距離と速度の関係は未整理。
発見後:銀河の後退速度と距離の比例関係を示し、宇宙が膨張中と判明。宇宙年齢の物差しができた。
ビタミンCの正体同定(1930年代/アルベルト・セント=ジョルジ、C.G.キング)
それ以前:壊血病の原因が曖昧で、長航海や保存食で患者続出。
同定後:アスコルビン酸として分離・測定・合成可能に。食品の栄養強化と公衆衛生が前進。
DNAが遺伝情報を担うこと(1944/1952/エイブリー、マクロード、マッカーティ;ハーシー&チェイス)
それ以前:遺伝の本体はタンパク質と考える人が多数派。
実験後:形質転換とファージ実験でDNAが本体と決着。分子生物学の矢印(DNA→情報)が明確に。
ノイマン型コンピュータ(1945/ジョン・フォン・ノイマン)
それ以前:計算機は配線で用途固定。使うたびにハードを組み替える。
提案後:プログラム内蔵方式でソフトを書き換えれば何でもできる汎用機に。現代計算機の当たり前に。
NMRの開発(1946/フェリックス・ブロッホ、エドワード・パーセル)
それ以前:分子構造の手がかりは破壊的・間接的。
開発後:原子核スピンを使って非破壊で構造を読む道が開け、化学・材料・医学(MRI)を刷新。
四重極質量分析計(1953/ヴォルフガング・パウル、ヘルムート・シュタインヴェーデル)
それ以前:質量分析は大型・高価で日常分析に不向き。
発明後:交番電場だけで質量を選別する小型フィルターを実現。環境・半導体・製薬の現場に普及。
太陽光発電パネル(1954/ベル研究所:チャピン、フラー、ピアソン)
それ以前:電気は発電所から配る一択。遠隔地や宇宙での電源確保が難題。
発明後:pn接合で光→電気を直接変換。衛星電源から家庭の屋根まで、分散電源の選択肢が生まれた。
電子捕獲型検出器 ECD(1957/ジェームズ・ラブロック)
それ以前:環境中の微量ハロゲン化合物は検出困難で、汚染が“見えない”問題だった。
発明後:超高感度で検出可能に。農薬・PCBなどの実態を可視化し、規制と保全を後押し。
ニュートリノ観測(1956検出/レイネス&コーワン;1987超新星SN1987A/小柴昌俊ら)
それ以前:ほぼ相互作用しない粒子の実在確認が難しく、星内部の情報は推測に頼った。
観測後:原子炉・超新星からのニュートリノを直接検出。宇宙を“粒子”で聴く新しい観測窓が開いた。
RNase Aの無償配布(1950s/アーマー社ほか)
それ以前:酵素の高純度試料は研究室ごとに手作りで、品質差が大きく再現が難しい。
提供後:食肉会社などが大量精製品を研究者に提供し、再現性と比較研究が一気に加速。酵素化学が共同体の技術に。
緑色蛍光タンパク質 GFP(1962発見:下村脩/1990s応用:マーティン・チャルフィー、ロジャー・チェン)
それ以前:細胞内でタンパク質が“どこで何をしているか”は黒箱に近かった。
実用後:遺伝子にGFPをタグして生きたまま可視化。発生・神経回路・がんの動態が見えるようになった。
エチジウムブロマイドによるDNA染色(1960s)
それ以前:電気泳動のDNAは見えず、結果確認に手間。
導入後:EtBrで蛍光可視化、ゲル上でその場確認が可能に。分子生物学の作業効率が飛躍。
制限酵素の発見(1960s–1970/ヴェルナー・アーバー、ハミルトン・スミス、ダニエル・ナサンズ)
それ以前:DNAを狙って切ることができず、遺伝子の切り貼りは夢物語。
発見後:特定配列を正確に切断できる“分子のハサミ”を獲得。遺伝子組換えとバイオ産業が始動。
カルシウムクロライド法とエレクトロポレーション(1970s:マンデル&ヒガ/1982–88:ノイマンら)
それ以前:外来DNAを細胞に入れる手段が乏しく、遺伝子導入が狭い応用に限られた。
導入後:CaCl₂でコンピテント化、電気パルスで膜に一時的な孔。多様な細胞に遺伝子を届けられるように。
ピペットマン(1974/ギルソン社・マリオットら)
それ以前:マイクロリットルの液量は口ピペットや目分量で誤差が大きい。
普及後:可変容量・空気置換式でμL精度の反復操作が誰でも可能に。実験の再現性を手の中で担保。
PCR法(1983/キャリー・マリス、セイキ・サイキら)
それ以前:標的DNAを増やすにはクローニングなど時間と手間がかかった。
発明後:プライマーと耐熱酵素で指数関数的に増幅。臨床検査・司法・古DNA・感染症対策を変えた。
トランスポゾンの発見(1940s→評価1980s/バーバラ・マクリントック)
それ以前:遺伝子はゲノム上で固定された“点”とみなされていた。
発見後:遺伝子が動くことを実証。進化・多様性・ゲノム編集の理解が一段深くなった。
ニューラルネットワーク(1986BP:ルーメルハートら→2012深層学習:ヒントンら)
それ以前:特徴は人間が設計し、機械学習は限られた精度に留まりがち。
再興後:誤差逆伝播で特徴を自動学習、データと計算力で性能が爆発。画像・音声・言語が“人並み”に。
クリック反応(2001/K.B.シャープレス、モーテン・メルダル)
それ以前:分子同士をつなぐ反応は条件が厳しく、端子の相性次第で失敗しがち。
導入後:速い・選択的・寛容な結合で“配線”が簡単に。材料・創薬・生物標識が効率化。
次世代シーケンサー NGS(2005–/ジョナサン・マルグリーズら〈454〉、デイヴィッド・ベントリーら〈Solexa/Illumina〉)
それ以前:サンガー法は高精度だが並列性が低く、巨大ゲノムは時間と費用が膨大。
登場後:数百万〜数十億リードを並列一気読み。医療・農業・微生物生態学にゲノムが日常的に。
CRISPR-Cas9(2012/エマニュエル・シャルパンティエ、ジェニファー・ダウドナ〔他に張鋒ら応用〕)
それ以前:遺伝子改変は時間・費用・標的自由度に大きな制約。
登場後:ガイドRNAで狙った場所を正確に切る標準工具に。基礎研究から育種・治療まで加速。
重力波の直接検出(2015/LIGO:バリー・バリッシュ、レイナー・ヴァイス、キップ・ソーンら)
それ以前:重力波は理論上の予言で、間接証拠のみ。
検出後:レーザー干渉計で時空のさざ波を直接観測。ブラックホール連星合体など“音で聴く宇宙”が現実に。
アルファフォールド(2020/DeepMind:デミス・ハサビス、ジョン・ジャンパーら)
それ以前:タンパク質の立体構造は測定に時間・費用がかかり、網羅が難しい。
登場後:配列から高精度に形を予測。設計・機能仮説・創薬がショートカット可能に。