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発明発見100物語

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アドレナリンの結晶化(1901/高峰譲吉)

「エピペン」という注射器を見たことはありますか?エピペンの中身はアドレナリンです。アドレナリンは、ハチに刺されたり、食品アレルギーでショックを起こした時に、心臓の拍動を強め、血圧を高めてくれるホルモンです。

アドレナリンを世界で初めて純粋にし結晶化したのが高峰譲吉です。ホルモンにはいろいろありますが、ホルモンの中でも初めてです。

腎臓のそばにある副腎の抽出液を犬に注射すると、血圧が急上昇することが知られていました。(1894年、オリヴァー&シャーピー=シェーファー)

また副腎抽出液にある有効成分がFeCl3と反応すると海緑色になることが知られていました(Vulpian反応)。

高峰は上中啓三の協力のもと有効成分の精製を行いました。精製にあたっては、目的の成分とそれ以外の成分を性質の違いを利用してより分けていきます。

まず副腎を水を加えてすり潰し、浮き上がった脂肪を捨てます。次に酸とアルコールを加えてタンパク質や無機塩を沈澱させ、除去します。 アルコールを蒸発させたら、今度はアルカリを加えて、目的成分を沈澱させます。沈殿は水とエタノールで洗います。 得られた沈殿は、さらに酸性溶液に溶かし、アルコールを加えるなどし、不溶性物質を除去します。 つまり「酸性条件下ではアルコールに溶け、アルカリ条件では析出する」というアドレナリンの性質を利用して純度を高め、結晶化したのです。

高峰は上このようにして、何百個分もの牛の副腎からのアドレナリンを高純度に精製することに成功しました。

皆さんは化学実験で、特定の化学物質の精製を体験することがあるかもしれませんが、手順通りにやるのでも結構難しかったりするのです。もし、その精製の仕方自体が決まっていないとしたら、試行錯誤をしてどうやれば精製できるかを見つけなくてはなりませんから、精製は格段に難しくなります。

当時は、精製の仕方の確立の精製の先例自体が少なく、手順決定のための多くの試行錯誤が必要であったに違いないと思います。



感心・感銘体験は意欲を伸ばすのに重要なだけではなく、研究者になって論文を書いたりする上でとても重要です。 「この成果すごいな」と思ったことのない人が、自分がこれから出すはずの成果のどこが優れているのか理解して研究を進めることはほぼ不可能でしょう。 感心・感銘体験は「これができたら良い論文になるな」と感じとるのに必要な感受性を育てるのです。